問題文)
急速に進む少子高齢化やノーマライゼーションの機運の高まり、さらには国際化の進展等により、特別区には、高齢者、障害者、子ども、外国人を含めたすべての人が、安全、安心、快適に暮らし、訪れることができるまちづくりが求められています。
このような状況を踏まえ、ユニバーサルデザインの視点に立った人にやさしいまちづくりについて、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
答案構成
この問題について重要なことは「ノーマライゼーションの定義」「やさしいまちづくり」という抽象的な概念を具体化することです。(見出しⅠ)
そして、問題に挙げられている「状況」の把握(①少子高齢化②ノーマライゼーションの機運の高まり③国際化の進展)と、「やさしいまちづくり」の客体が誰か(高齢者、障害者、子ども、外国人を含めたすべての人)を把握することです。
以上を分析し、問題を記載するための基本情報として抽出できていなければ論文としては不正解です。
問題で問われているのは、問題に掲載された状況を前提として「ユニバーサルデザインの視点に立ったやさしい街づくり」を論じることです。価値判断の基準は税金で施策を実施する特別区職員としての妥当性判断基準です。
各々の論点について
〇 「ユニバーサルデザイン」の意義
障害の有無や年齢、性別、人種などにかかわらず、たくさんの人々が利用しやすいように製品やサービス、環境をデザインする考え方
〇 「やさしいまちづくり」の意義
「やさしい」という概念は主観的であり、人によって価値観が異なるが、本問では、ユニバーサルデザインというキーワード、また、少子高齢化、ノーマライゼーション、国際化進展の状況を前提として検討する。
〇 特別区職員として考えるべき「やさしい街づくり」とは、子供、高齢者、障碍者、外国人観光客など「ハンディキャップ」のある個人に対して、利便性の高い街にすることである。
〇 子供にとって利便性が高い街とは
① 住居表記などが平仮名やカタカナで表現され、地図などの表現も子供に理解しやすいように色彩や記号を充実させて表現されていること。
② 交通機関にアクセスするための階段の段差や段数、さらにエスカレーターやエレベーターなどが完備されていること。
③ ホームドアなどの安全施設が充実していること。
④ 公園や公共的な広場で軽運動などをいつでも楽しめる環境にあること。
〇 高齢者にとって利便性の高い街とは
⑤ ①、②、③に加えて、古い伝統、文化を大切にして、同年代の人で集まる機会を設け、周期的に地域社会に参加できるような集会が開催されること。
⑥ 高齢者の健康管理・維持・増進について様々なサービスを提供し社会参加や労働へとつなげ社会の発展に貢献しているという意識を持てる「邪魔者扱いされない地域社会のある街」。
⑦ 交通機関へのアクセスがバリアフリーであること。
〇 障碍者にとって利便性の高い街とは
⑧ ①~⑦に加えて家族や保護責任者がいなくても、自律的に行動して社会活動や文化活動を行える環境。
⑨ 利用者を施設運営者が監視・監督しやすいように監視カメラなどの充実した環境。
⑩ 障害者が自分で救助を申し出られない時でも容易に救助できる監視体制を充実する。
〇 外国人観光客にとって利便性の高い街
⑪ 商業施設における多国家言語の翻訳可能性
⑫ 公共交通機関・公共施設管理者・公務員の他国言語に対する応答力の充実
⑬ 公的案内所の数的な確保、案内員の数的確保、観光ガイドの外国への適用力の充実
以上の論点と情報を元に、採点しやすい(高評価につながりやすい)論文答案を書いてみると次のようになります。
Ⅰ 現在の状況
①少子高齢化が急速に進んでいる。②ノーマライゼーションの機運が高まっている。③国際化が進展している。
Ⅱ ユニバーサルデザインの意義
ユニバーサルデザインとは「障害の有無や年齢、性別、人種などにかかわらず、たくさんの人々が利用しやすいように製品やサービス、環境をデザインする考え方」である。
Ⅲ「やさしいまちづくり」の意義
「やさしい」という概念は主観的であり、人によって価値観が異なるが、本問では、ユニバーサルデザインというキーワード、また、少子高齢化、ノーマライゼーション、国際化進展の状況を前提として検討すると、特別区職員として考えるべき「やさしい街づくり」とは、子供、高齢者、障碍者、外国人観光客など「ハンディキャップ」のある個人に対して、利便性の高い街にすることであると考えます。
Ⅳ 具体的考察
1)子供にとって利便性が高い街とは ①住居表記などが平仮名やカタカナで表現され、地図などの表現も子供に理解しやすいように色彩や記号を充実させて表現されていること。②交通機関にアクセスするための階段の段差や段数、さらにエスカレーターやエレベーターなどが完備されていること。③ ホームドアなどの安全施設が充実していること。④ 公園や公共的な広場で軽運動などをいつでも楽しめる環境にあること。以上①~④が整備されている街づくりだと思います。
2)高齢者にとって利便性の高い街とは上記①~④に加えて、古い伝統、文化を大切にして、同年代の人で集まる機会を設け、周期的に地域社会に参加できるような集会が開催されること。⑥ 高齢者の健康管理・維持・増進について様々なサービスを提供し社会参加や労働へとつなげ社会の発展に貢献しているという意識を持てる「邪魔者扱いされない地域社会のある街」。⑦ 交通機関へのアクセスがバリアフリーであること。などが挙げられます。
3)障碍者にとって利便性の高い街とは①~⑦に加えて家族や保護責任者がいなくても、自律的に行動して社会活動や文化活動を行える環境。⑧利用者を施設運営者が監視・監督しやすいように監視カメラなどの充実した環境。⑨障害者が自分で救助を申し出られない時でも容易に救助できる監視体制を充実する。などが挙げられます。
4)外国人観光客にとって利便性の高い街とは、⑪商業施設における多国家言語の翻訳可能性⑫ 公共交通機関・公共施設管理者・救急施設・公務員の他国言語に対する応答力の充実。⑬公的案内所の数的な確保、案内員の数的確保、観光ガイドの外国への適用力の充実などが挙げられます。
Ⅴ 以上のような要望に対して、できるだけ税金を使わないで「街づくり」を図ることが特別区職員に求められると思います。従って民間企業との連携を図り、民間資源・活力を活用して公務員による管理監督ではなく、商店街や地域町内会などに主体的になってもらってアイデアを実現することにあると思います。 以上 (1192字)
論文は、数学の記述式答案と同じで、与えられた前提から、条件を満たす具体例を回答に記載するという作業です。出回っている「模範解答」のように自分勝手な基準で、抽象的な文章を書いても仕方ありません。論文は、定義・前提条件が規定されていて、それに基づいた具体性のある記載をすることになっています。論文は日本の国語とは違います。全世界に通用する一定の書式を備えている学問ですから。その辺を間違えないように。