現実的な選択(民間との職務面・待遇面での差)


現実的な選択(民間との職務面・待遇面での差)

公務員幹部や民間企業幹部を多く友人に持つ私が、両者の優劣を検証してみましょう。

〇 入社2年目までの職務と待遇

この2年間が最も両者の違いが出る期間だと言って良いでしょう。

民間の場合は、「踏み絵時代」と言われて、業務の難しさや過酷さを体験させられる期間です。企業における、人間関係、上下関係や「マスト(must)」、売り上げ目標達成などの重要性を理解させられます。大抵の大学生はこうした環境に馴染めないのが普通です。退職率も3割程度になります。企業としてはこの時期に選別を行います。この時期は「下積み業務」と言われて体力的にも精神的にも過酷な時期です。

辞める理由の9割が「思ったような会社ではなかった」ということですが「企業に採用されたら最初は苦労する」というのは覚悟しておくべきでしょう。

これに対して、役所では、「踏み絵」はありません。民間と違って仕事について「高い完成度」が要求され、間違いが許されません。間違いをすればすぐ住民訴訟や問題となりますので、そうならないように徹底して教育されます。教育してもできそうもないと思われれば、最初から「簡単な仕事」に配属されます。そして、配属は大学名や学部によって決まります。それは仕事の内容が学業に似ていて勉強する姿勢がある人でないと教育の成果が上がらないからです。

公務員を「サービス業」という人がいますが、カラオケボックスのアルバイトとは違い、住民の生殺与奪を握っていますし、児童相談所などでは担当した子供が死ぬこともあるのですから、責任の重い仕事で、民間のサービス業と比較するのは疑問があります。

とにかく、民間企業のような「下積み」的な業務はなく、配属された職場でしっかりと教育されます。配属は採用試験の様々な場面で素質を見られて決められていきます。

いずれにしても、民間と違って「辞めさせる」ということはありませんし、むしろ、辞めないでもらいたいというところです。

地方公務員の仕事は、霞が関の国家公務員と違って「オフィスワーカー」ではなく、ロードサイドの公務員と総称されるように、住民に寄り添う仕事が多いのです。水道料金滞納者に対する水道停止処分、生活保護の停止処分など、ともに大卒地方公務員がするべき「処分」として重要な職務なのです。

そうした職務が「自分の思った仕事とは違う」といって辞める人も多いようですが、民間に転職しても「踏み絵」の職場を経験して、結局、公務員試験を再受験することが多いのも事実です。

予備校が「公務員はバラ色」的な宣伝をしているのは、間違いではないのです。民間と比べれば、どんなに大変そうな仕事でも公務員の方が労働環境として優っていることは変わりません。

〇 3年目以降~35歳まで。

この時期以降は、企業も公務員もプライベートの充実が職務や待遇と関連してきます。民間の場合、「結婚すれば退職しないだろう」という推測が働き、責任ある仕事を任されるようになります。様々な部署で責任あるポジションに就く人が増えるようになります。日本の企業では「30前、又は結婚するまでは半人前」という考え方がありますが、それは「少々きつい仕事でも辞めない」「夫婦で力を合わせて乗り切れる」「ストレスの多い仕事でも家庭によってストレスが解消される」という経験則があるからです。この経験則は7割程度は当たるので企業は結婚する社員を歓迎します。特に商社では結婚しなければ海外勤務はさせないというのが慣例です。
これは異性問題を起こさないようにという配慮です。したがって、結婚が一人前の仕事を得るための前提であるというのは、商社においては、世界共通の認識であると言っても良いでしょう。

この時期に求められるのは「働くことについて責任感の変換」です。

具体的には、大学時代は「お金よりもやりがい」「やりたいことができれば良い」という理想中心の考え方ですが、視野が広くなると「生活重視」「家族のため」という価値観に変わります。AKBの女子中学生みたいだったアイドルが20代になると「アイドルの現実」が、家族や周囲の人の応援で成り立っている「協業社会」であることを思い知らされるのと同じに、現実は「お金」が支配していることに気づくと一人前になります。

こうして30代で現実的な選択ができた公務員や会社員がそのあとの人生を豊かにすることができます。民間でも公務員でも結婚によって与えられる仕事が変わるのがこの年代です。結婚こそが責任感の具体化ということなのでしょう。

〇 35~45歳

この年代で、民間企業と公務員の差が現実的になります。民間企業では転職やリストラが多くなり、家族持ちの民間企業従業員は、公務員への転職を夢見るようになります。この年代では転職は現実的になります。つまり、リストラされないような仕事、ということになるのでしょう。公務員が選択されることが非常に多くなります。一方、この年代の公務員は仕事も生活も安定して最も豊かな10年を送ることになります。
これから定年までの間では、平均的な公務員の処遇が、民間企業では優秀な社員の処遇と同じか、それ以上になることも少なくありません。もちろん、家計全体としての収入は民間企業の方が多いでしょうが、持ち家や子供の教育(公立進学が中心)について年間で数百万円程度の差がつくので結果的に、貯蓄額は公務員と民間で差が少ない。やりくり上手な奥さんをもらえば公務員の方が利殖を含めて多くなる可能性が高い。転勤においても住宅の手配など国家公務員では非常に完備しているので、社員任せの民間、地方公務員と比べて費用面、移転後の生活しやすさなどは大きな差が付くと言って良いでしょう。

〇 45~定年

民間企業では、この時期に年収で大きな差が生まれ、またリストラされる結果、平均的な収入(リストラされない人とリストラされたり転職したりした人の給与の平均のイメージ)は、公務員の方が民間よりも高くなるでしょう。たしかに一部上場の優良企業では非常に高い給与が与えらえれ、
役員になれば2000万円程度の年俸の人もいるでしょう。しかし、このような高収入を得るのは年間に就職する大卒学生60万人のうちで1%程度6000人程度と推定できます。残りの99%の平均年収は790万円程度(DODA調べ)です。となると公務員の方が給与は高いくなることが確実になってきます。定年後の再就職も公務員の方が確実ですからこの年代で、大きな年収の差が生まれます。

民間企業で1%に残るために23年間努力するか、それとも2年程度の勉強で合格率の高い公務員になり45歳以上の100%を得るか。自分の可能性をどのように判断するかが、「選択のカギ」です。